血染めの笛

明治の末頃の話。
沼津市に住んでいた按摩さんでお囃子の名人がいました。根古屋出身なので根古市さんと呼ばれていたその方は強い笛を吹くというので、請われて近隣のお祭りでも笛を吹くことがよくあったそうです。
ある年、大宮の秋まつりに請われて笛を吹きに来たそうな。
髭をあたってもらおうと入った床屋は、なんと以前の競り合いでさんざんにうち負かされた相手の笛吹きで、それを恨んだ床屋は卑怯にもかみそりで根古市さんの唇を切り裂いたと言います。
これで笛も吹けず逃げ帰っただろうと思っていた床屋は、多少の後ろめたさは感じながらも山車に乗り、いつものように笛を吹いていました。因縁の競り合い相手の山車が見えたとき、床屋はあっと声を上げへたりこんでしまいました。
なんと切られた唇から血を飛沫かせながらも根古市さんは笛を吹いていたのです。

この時の無理がたたって、唇の傷は大きくあとを残すことになりました。しかしこの話は彼の名を冠した根古市流沢田祭り囃子とともに沼津市沢田に今も伝えられています。

参考文献

袖日記 大宮浅間秋祭り夜噺 囃子方の弁 富士宮囃子1 富士宮囃子2
 加藤長三郎氏講演 笛今昔 秋祭り 英文解説

伝説・こぼれ話

富士宮の特殊事情 物騒な話 湧玉囃子 血染めの笛 鉾立石
神田川原にのろしを上げて 露店が無かった祭り

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。